「中国ではなく日本人」には意味なし
さて、ここまで書いて、色々と疑問に思われた方もいるかもしれませんので、ちょっと説明を加えたいと思います。
先ほど「中国人」と言ってからかわれた、と書きました。残念ながら、昔も今も一部のヨーロッパ人は東洋人を見るないなや「中国人」だと決めつける傾向があります。ですから、前述の悪ガキどもも「中国人、中国人!」と言ってからかったわけです。
こういう時に「私は中国人ではなく日本人だ!」とか「私は中国人ではなく韓国人だ!」と反論するのは悲しいことに何の効果もありません。なぜなら、相手は「ハナからアジア人を低く見ており、誰がどこの出身かどうかには興味がない」からです。ですから、「日本人だ」と反論した後に、そこから有意義な会話が生まれることはまずないでしょう。相手は普段から低く見ているアジア人を「からかって、いじめること」にしか興味がありません。
上に書いた「チンチャンチョン」もまた、東洋人をバカにするときによく使われるフレーズです。悪ガキども曰く「だって、アジアの言葉は、全部チンチャンチョーンというふうに聞こえるんだもん!」とのことでした。
欧州に根強く残るアジア人蔑視
私は子供の頃、「チンチャンチョン」というからかいのフレーズを用いて、日本語などの言語をバカにするのはドイツ人だけかと思っていました。
ところが、大人になって日本に住むようになってから、「父親がイタリア人、母親が日本人のイタリア育ちの女性」と仲良くなりました。彼女に私が幼少期にドイツで「チンチャンチョン」という差別行為をされたという話をすると、彼女は暗い表情をしてこう言いました。「あ……私もあった。イタリアではチャンチュンチョンだったよ」。
アジア人を低く見て、アジアの言語の響きを「バカみたい」とからかう空気のようなものは残念ながらヨーロッパ全土にあります。さらに時間が経ってから知ったのは、中東やアフリカでもこの手のアジア人に対する差別行為が蔓延していることです。

