病院は「やわらかいイノベーション」の場になる

【武中】面白いですね! とりだい病院にも「ほめるん(サンクス)カード」という、職員内で感謝のカードを送る制度があります。あんこのパッケージに書いてあったら、もっと嬉しいかも。

【竹田】あんこをそのまま食べてもいいし、パンなどに塗ってもいい。主原料が小豆の本格あんこだから美味しくて健康的。あんこの代わりにせんべいでもいいんです。地域それぞれの名物や個性があるでしょうから。こうした共創プロジェクトの多くは、専門的な知識やスキルがなくても始められます。

それでも、暮らしをすこやかに彩り、新たな価値を生み出しているのが、また面白いところです。医療や暮らしの“人間(じんかん)=人と人のあいだ”を見直し、編み直す、いわば“やわらかいイノベーション”とも言えます。

鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 20杯目』
鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 20杯目』

【武中】やわらかいイノベーションによって、病院を舞台に新しいビジネスが始まる可能性がありますね。

【竹田】ぼくは病院マーケティングジャパンの活動を含めて、年間150ぐらいの病院を訪れています。これまで行った中で病院長や事務長など直接の知人がいるところが700から800カ所。全国の8000病院の中ではまだ10分の1程度。

そんな中でぼくが病院に最も大切だと思うのは、そこに“医療人の熱量”があるかどうか。それは数値化できるものではないけど、しかし、確実に人を、医療を、未来を変える力がある。そして、とりだい病院こそ医療人の熱量を駆動力に、人と地域の未来を大きく変えていく病院だと思います。

【武中】私も竹田さんの熱を十分に感じました。熱量高くこれからもやっていきます。これからもよろしくお願いします!

竹田陽介(たけだ・ようすけ)
病院マーケティングサミットJAPAN 代表理事
2006年獨協医科大学医学部卒業後、順天堂大学附属病院 臨床研修センター、獨協医科大学附属病院 循環器内科などで勤務。2010年東京工業大学 大学院生命理工学研究科で学ぶ。2018年より病院マーケティングサミットJAPAN 代表理事。循環器内科医としての診療に加え、多くの病院ファンづくりや学会プロデュースを手掛ける医療コミュニケーションのエキスパート。近年はカルチュラルエンジニアとして、病院、学校、企業、学会の橋渡し、「すこやか(ヘルス×ウェルネス)」共創プロジェクトの監修を行っている。


武中 篤(たけなか・あつし)
鳥取大学医学部附属病院長
1961年兵庫県出身。山口大学医学部卒業。神戸大学院研究科(外科系、泌尿器科学専攻)修了。医学博士。神戸大学医学部附属病院、川崎医科大学医学部、米国コーネル大学医学部客員教授などを経て、2010年に鳥取大学医学部腎泌尿器科学分野教授。2017年副病院長。低侵襲外科センター長、新規医療研究推進センター長、広報・企画戦略センター長、がんセンター長などを歴任し、2023年から病院長に就任。とりだい病院が住民や職員にとって積極的に誰かに自慢したくなる病院「Our hospital~私たちの病院」の実現に向けて取り組んでいる。

(初公開日:2025年11月24日)

(構成=カニジル編集部)
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