租税特別措置に手をつけられるか
もっとも、日本版DOGEで当面の目的としている租税特別措置や補助金について、大ナタをふるえるのかどうかは、まだまだ疑問だ。
租税特別措置というのは、特定の分野への支援などのために、本来の所得税法や法人税法で定められた税金ではなく、特別な税金を課す措置で、大半の場合、本来の税負担を軽減するために使われている。大企業などが恩恵を受けているケースが多く、自民党や自民党の政治団体、自民党議員に多額の献金をしている企業が恩恵を受けているのではないか、という疑念が指摘されている。自民党が頑なに拒んでいる企業団体献金の廃止を求める野党などの主張の一つの理由となっている。
つまり、高市首相が本気で租税特別措置の見直しに手をつけた場合、自民党への企業団体献金に大きな影響を及ぼす可能性がある。高市内閣に身内の自民党から批判が噴出してくる可能性があるわけだ。また、高市首相が財務省の権益に介入し始めた場合、財務省は租税特別措置の廃止を強く打ち出すことで、高市内閣を足元から突き崩す戦略に出てくることも考えられる。
維新にとっては「成功しても失敗しても得」
そうしたアンチ高市の動きに対抗するためにも、カギを握るのが高市首相への国民の支持だ。日本版DOGEで財務省を敵に回すスタンスが、国民の支持を高めると現段階で高市首相は判断しているのだろう。逆に、日本版DOGEを作ったものの、租税特別措置に何の手もつけられなかったとなると、今は高い内閣支持率が一気にはげ落ちる可能性もある。
連立合意で日本版DOGEを求めた維新からすれば、高市首相が本気で斬り込んで各省庁による多額の補助金などにメスが入れば、身を切る改革を求めてきた維新の存在意義を示すことになる。一方で、高市内閣の対応が不十分なまま終われば、維新の主張を実現するには選挙で議席を得る必要がある、という大義を掲げることに繋がる。
防衛費の大幅増額が既定路線になっていく中で、どうやって安易な増税から暮らしを守るのか。国民の目には日本版DOGEによるムダの削減は当然のことと映る。


