なぜ、自民党はJALを目の敵にするか
このとおり両社の主張は平行線のため、最終的には、行政が両社の主張を踏まえた上で、国民便益を最大化する判断を下すしかないが、政治家の思惑も事を複雑にしている。
前政権の間に公的支援を受け、再上場も果たしたJALに対し、批判的な意見を持つ現政権の議員が一部存在する。JAL再建を担った稲盛和夫JAL名誉会長は、民主党応援団とされたのもその大きな要因だ。これまで通りに「均等配分」とは素直にいかない可能性がある。
こうしたJALとANAを巡る議論について、ある航空関係者はこうため息を付く。「日本経済を牽引していってほしい両社がいがみ合ってばかりいる。まるで、相手を叩けば自分が得する『ゼロサムゲーム』にあるかのようだ。新型機ボーイング787が本格始動しつつある今、両社は批判合戦を止め、国益の観点から外に向けての発信をしてほしい」
国内のこうした動きは海外からの注目も大きい。アライアンス(航空連合)の競争力に大きく関わってくるからだ。JALとANAの羽田と成田を合わせた国際線の昼間帯便数は、それぞれ49、53と拮抗しているが、それぞれが加盟するワンワールドとスターアライアンスで見ると、64と93と現時点でもスターアライアンスが有利になっている。これが、仮に今回配分される羽田国際線発着枠が全てANAに配分されるようなことがあれば、64対113と差は大きく開き、ワンワールドが極めて不利な状況に追い込まれる。自国の航空政策に少なからぬ影響を与えるこの政策判断の行方に、米国を始めとした各国の政府は神経をとがらせており、採られる措置の内容次第では、各国との関係にも影響を与えかねない。
国交省に告ぐ!
枠配分の現在の議論は、国民の注目をあまり集めないまま進められている。このままでは国民不在の決着もありうるだろう。前出の戸崎教授は、こう話す。「行政は競争の起こるような路線を増やす観点から判断をすべき。国際線のネットワークの問題をみても、枠の配分に偏りがあると利用者が不便になるのは明らか。黒字化したJALに不採算路線を押し付けようとする動きもあるが、これもおかしい。不透明なやり方をせず、欧米の事例にならって『離島路線については補助金をだす』などの明確なシステムをつくるべきだ」
いずれにしろ、この発着枠配分のルールについては、厳しい説明責任が問われてしかるべきだろう。不透明で恣意的な判断により利用者の利益を損なうことは断じて許されないのだ。