重症度は飲酒量だけで決まらない
近年の研究では、比較的少量の飲酒でも頭痛や倦怠感が現れることが報告されており、二日酔いの重症度は飲酒量だけで決まるわけではないことが明らかになってきています(Verster et al., 2020)。
ここでは、二日酔いを悪化させる主なリスク要因を整理していきます。
空腹での飲酒
アルコールは主に小腸で吸収されますが、空腹時には胃に食べ物がないため、小腸への移動が速まり、吸収速度が上昇します。その結果、血中アルコール濃度が急上昇し、ピーク値が高まることで、二日酔いの症状が強まる可能性があります(Holt, 1981;Mackus et al., 2020)。
実際、空腹での飲酒は食後の飲酒に比べ、血中アルコール濃度のピークが約1.5倍高く、体内にアルコールが残る時間も約2時間延長することが報告されています(Jones and Jönsson. 1994)。
さらに、空腹時は胃粘膜が刺激されやすく、胃炎や吐き気といった症状も起こりやすくなります(Yu et al., 2020)。
普段よりも多く飲む
二日酔いには明確な閾値はなく、「普段より多く飲むこと」自体が症状悪化のリスクになります。ある研究では、血中アルコール濃度が比較的低くても、“いつもより飲んだ夜”に限って翌日の不快症状が強く出たことが示されており、「個人にとっての過剰量」が二日酔いの重要な決定因子であることが示唆されています(Verster et al., 2020)。
飲酒頻度(習慣性の飲酒)
大規模なデータを用いた研究では、二日酔いの頻度が高い人ほど、1回あたりの二日酔いの“重症度”も高くなることが報告されています(Rîșniță et al., 2025)。つまり、頻繁に二日酔いを経験する人ほど、次も重くなりやすいという「逆耐性」の可能性が示され、たとえ1回あたりの飲酒量がそれほど多くなくても、飲酒頻度が高いと二日酔い症状が強く出やすく、回復も遅れやすくなるかもしれないのです。
色の濃いお酒
お酒の種類や含まれる成分も二日酔いに影響することがあります。
ウイスキー、ブランデー、赤ワイン、テキーラなど色の濃いお酒には、「コンジナー」と呼ばれる不純物が多く含まれています。コンジナーは発酵過程で生じる副産物で、風味を豊かにする一方、肝臓での代謝負担を増加させ、二日酔いを悪化させることが報告されています(Swift and Davidson, 1998)。
また、赤ワインにはヒスタミンという物質が含まれており、この物質が頭痛リスクを高める可能性も指摘されています。そのため、飲むお酒の種類を意識することも、二日酔いの重症度を左右する重要な要素となります。

