アルコールは脱水や睡眠の質の低下に影響
二日酔いには、脱水と電解質の乱れも関与しています。
アルコールは抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌を抑制する作用があり、それにより、腎臓での水分再吸収が低下し、尿量が増加します(Taivainen et al., 1995)。この過程で、水分と共にナトリウムやカリウムなどの電解質も失われるため、電解質のバランスが崩れ、頭痛・倦怠感・集中力の低下などが生じる可能性があります(Rodrigo et al., 1998)。
また、アルコールは睡眠の質にも影響します。
寝つきはよくなる一方で、深い眠りであるノンレム睡眠が減少し、夜間の中途覚醒が増えることが報告されています(Gardiner et al., 2025;Ayre et al., 2021)。そのため、睡眠時間が十分でも体の回復が不十分となり、翌朝の倦怠感や集中力低下につながりやすくなると考えられます。
さらに近年は、アルコールによる炎症反応にも注目が集まっています。
アルコール代謝で生じるアセトアルデヒドや活性酸素は肝臓の免疫系を刺激し、炎症を促します。その結果、肝細胞の代謝・解毒機能が一時的に低下することが示されています(Nagy, 2015;Hyun et al., 2021)。
全身の炎症負荷が高まり二日酔いが悪化
加えて、アルコールは腸粘膜を傷つけ腸内環境を乱すため、腸のバリア機能が弱まり、炎症性物質が血中に漏れやすくなる可能性も指摘されています(Shen et al., 2025)。こうした全身の炎症負荷が高まることで、翌朝のだるさや不快感など二日酔い症状が悪化すると考えられています(van de Loo AJAE et al., 2020)。
このように、複数の要因が重なり合うことで、翌朝にさまざまな不快症状が現れると考えられます。血中アルコール濃度がゼロに近づいても、アセトアルデヒドや炎症性物質が体内に残っているため、頭痛やだるさが続くことがあります。酔いは醒めても、体の内部ではまだ回復が追いついていない場合がある点が、翌朝のつらさにつながるのです。二日酔いの基本的なメカニズムを理解したところで、次に知っておきたいのは「どのような飲み方や状況が二日酔いを悪化させるのか」という点です。

