エンタメ界、観光業に影響が広がっている
高市首相の存立危機事態発言は、わが国の経済にマイナスの影響をもたらしている。エンタメ分野で、人気音楽デュオ“ゆず”はやむを得ない諸事情を理由に上海、香港、台北での公演を中止した。中止まで至らないものの、トラブルなどを懸念して公演を延期したアーティストもいるという。
これは、日中の経済関係の基礎の一部が棄損したことを意味するだろう。貿易をはじめ経済の円滑な運営には、人々の安心と安全が不可欠だ。アーティストが安心してコンサートを開催できないほど、中国政府の対日批判は悪化しているとみられる。
サービスの分野でも影響は深刻化しつつある。中国が訪日の自粛を勧告した結果、中国からのクルーズ、バスツアーのキャンセルが相次いだ。場所によっては、中国からの観光客の姿が見られないところもあると聞く。11月下旬、中国政府は、来年3月末まで国内の航空会社に日本への航空便を減らすよう要請したと報じられた。
レアアースを武器に圧力をかける恐れも
今のところ、中国からの訪日客は中低所得層では減少、高所得層はあまり変化がないとの指摘もあるが、先行きは楽観できない。負の影響は、サービスだけでなく、モノの輸出や中国での事業運営にも及ぶだろう。
教育分野への影響も懸念される。わが国では、少子化の加速によって中国からの留学生を確保して学校運営を行うケースは増加傾向だ。中国教育省は、わが国の治安は不穏であり、中国人をターゲットにした犯罪が増えているとして、自国民に対日留学計画を慎重に検討するよう通知を出した。
今後、中国が、レアアース(希土類)の対日輸出規制を持ち出して、わが国に圧力をかける展開も想定される。中国企業との合弁を含めた、日本メーカーの自動車や家電製品の不買運動が起きる恐れもある。
11月25日、日本政府は「従来見解の変更に当たらない」として、高市首相の存立危機事態に関する答弁書を決定した。今回の日中問題の悪化は長引くことが懸念される。

