チャイナリスクに日本企業が対抗する方法
2017年3月、中国は在韓米軍の終末高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)配備に報復し、韓国への団体旅行を禁止した。解除されたのは、それから6年以上たった2023年8月だった。また、ミサイル配備用地を提供した大手財閥系企業のロッテは、中国でロッテマートの複数店舗が営業停止に追い込まれた。
仮に、中国が訪日旅行を全面禁止すれば、わが国経済にはかなりの下押し圧力がかかる。香港を含めた中国からの訪日客の消費額は、2025年1〜9月期実績の年率換算で約2.7兆円、GDPの0.4%に達する。
それに加え、わが国の重要産業の自動車分野での販売、合弁、調達を中国が禁止する恐れもある。事態の長期化により、わが国が複数の期にわたってマイナス成長に陥ることも考えられる。
こうしたチャイナリスクに対応するため、日本企業は必要な取り組みを行う必要がある。まず、リスクの分散だ。資材の調達、製造、販売市場として、中国の重要性は高まった。わが国の産業全体で販売の44%近くが、中国向けとの試算もある。対中関係の悪化による収益の減少を防ぐために、関連企業は今から、サプライチェーンや販売市場としての中国の比率引き下げに取り組むべきだ。
「対中包囲網」を完成させることが急務
もう一つは、企業の実力を高めることだ。具体的には新商品開発の加速だ。他の国の企業も、今回の高市発言を機にチャイナリスクの高さを理解したはずだ。自国内、ASEAN、インドをはじめとする新興国、そして米国や欧州などの主要先進国市場をめぐるシェア争いは、これまで以上に激化するだろう。競争に勝ち残るためには、他社にはない新しい価値を持つモノやサービスを創出し、シェアを高めなければならない。
政府にも取り組むべき点はある。わが国は、米国、欧州などの先進国と連携を強化し、台湾問題、南シナ海の領海問題、北朝鮮問題に是々非々の姿勢で取り組む多国間連携を急ぐべきだ。
特に、経済面からの対中包囲網の形成は、わが国が自律して経済運営を目指すために重要性が高まっている。対応が遅れれば、中国が新興国や景気が厳しい欧州の一部の国の支持を取り付け、対日批判がエスカレートする恐れもあるだろう。

