※本稿は、髙橋大樹『あなたの実家、どうする? 知識ゼロでも絶対後悔しない! 損しない! 不動産相続の新・ルール』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。
祖父の土地をめぐり裁判へと発展した事例
Dさんの祖父が亡くなった後、Dさんの親の兄弟姉妹6人とその配偶者が、祖父の所有していた都内280坪の広大な土地の相続をめぐって真っ二つに割れました。最初は普通の親戚会議でした。みんなで「どのように分ければいいか?」を話し合っていたのです。
ところが……話し合いが進むにつれて、どんどん感情論へともつれていったのです。
「私が父の面倒を一番多く見たのよ。病院への付き添いも私がやったんだから! なのに、なんでほかのみんなと同じ取り分なの?」と次女が叫ぶと、
「あなたは大学まで出してもらったのに、私は高卒で働かざるを得なかったのよ。結婚の時だって、お兄さんはお金をもらったのに、私はもらえなかった。そんなの不公平よ!」と長女が涙ながらに訴える。
法定相続分という法律で決まった分け方があるにもかかわらず、過去の恨みつらみが次々と噴出してきたのです。何度話し合いを重ねてもいっこうに話はまとまらず、最終的にはそれぞれが弁護士を立てて裁判することにまでなりました。
精神的ストレスで母はがんを患い死亡
弁護士が入ると、もはや話し合いではなく「戦争」のはじまりです。送られてくる書面には、幼い頃からの金銭のやり取りなどが詳細に記され、互いの不信感は決定的なものになりました。
「○年○月に○○万円贈与を受けている」
「○○の学費として○○万円支出」
「ほら、やっぱりお姉さんはお金をもらっていたじゃないの。ずるいわよ!」
「あんただって、学費をこんなに出してもらっていたじゃない。私より多いわよ」
感情的な対立はさらに激化。Dさんのお母さんには、両方のおばさんから「ちょっと聞いてよ! 昨日ね……」「あの人ったらひどいのよ!」と連日、愚痴の電話がかかってくるようになりました。
そのうち、Dさんのお母さんは電話の着信音が鳴るだけでパニックを起こすように。その精神的なストレスからか、ついにはがんを発症し、争いの最中にあっけなくこの世を去ってしまったのです。「こんなトラブルに巻き込まれなければ、お母さんは今でも元気だったはず」とDさんはくやしくてなりません。
もちろん、Dさんの親戚一同は完全に絶縁状態。土地は分割されましたが、その後は誰かが亡くなっても連絡が来ることはありませんでした。

