日本の物価は4年以上、上がり続けている
10月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、前年同月比で3.0%上昇した。総合指数の上昇は50カ月連続だ。現在、わが国はインフレ環境にある。2%の物価安定の目標を掲げる日本銀行は、慎重に利上げを実施すべき局面を迎えているといえるだろう。
わが国経済の再生には、新しい需要創出に向けた規制の緩和や起業の増加や産業育成が必要だ。それによって新しいモノやサービスの創出が増えれば、一時的な痛みはあるものの経済は持続的な成長に向けての道が開ける。実質ベースで賃金も増えるだろう。
高市政権の政策は、日銀に対して緩和的な金融政策を求めているように見える。その影響は、10月の金融政策決定会合でも確認できるとの指摘は多い。
植田総裁が“春闘での賃上げの初動”を見たいと述べたのは、利上げまでの時間を稼ごうとするスタンスに映ったようだ。一方、米国やユーロ圏では、政策金利の一時据え置きの公算は高まった。その結果、わが国と主要国の金利差を狙って円売りは加速した。
経済対策の財源はどこから捻出する?
高市政権の経済対策で円売りは増えた。11月21日午後、高市首相は臨時閣議を開き21.3兆円規模の総合経済対策を決定した。一般会計からの支出は17.7兆円、あわせて2.7兆円の減税なども実施する。これは2023年、24年の13兆円台の対策を上回る。
しかも、高市総裁は減税などの財源を明示しなかった。基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の黒字化に単年度ではなく、数年単位で取り組む方針も表明した。財源なき積極財政、財政健全化のコミット低下は財政悪化に直結する。結果として、国債の発行は増え、日銀の金融政策正常化はさらに難しくなるだろう。
高市政策には、ある意味で矛盾がありそうだ。物価を抑制し、財政健全化を急がなければならない状況下、補助金や金融政策正常化の遅れでインフレは止まらない恐れは高い。それと同時に、国債の格下げ、財政破綻のリスクは上昇する。そうした展開を懸念した投資家は円を売った。

