富士山が噴火した場合、首都圏はどうなるのか。東京大学名誉教授で、山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣さんは「大規模な噴火によって火山灰が首都圏の広い範囲に堆積するおそれがある。火山灰が10センチ積もると、自動車や鉄道の走行が不可能になり、電機や上下水道などのインフラも壊滅状態になる」という――。(第2回)

※本稿は、藤井敏嗣『富士山噴火 その日に備える』(岩波新書)の一部を再編集したものです。

駿河湾からの富士山
写真=iStock.com/Torsakarin
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「噴火中の大地震」の発生は珍しくない

火山噴火の前に前兆現象としての地震活動の活発化が起こることがあるが、噴火最中に激しい地震が発生することも珍しくない。

紀元79年のヴェスヴィオ噴火で、ポンペイの難民救済に向かったものの、激しい軽石の降下に妨げられてポンペイの近くに接岸できず、ナポリ湾のさらに奥のスタビアという街に上陸した時の大プリニウスの様子を、小プリニウスはタキトゥスへの書簡の中で次のように記述している。

「しきりに大きな地震が起こって、家がゆらぎ、まるで土台から根こそぎにされるようで、さっきはこちら、今度はあちらの方へと引き離され、あるいは揺り戻されるように思われた」(國原吉之助訳)。噴火の最中にも激しい地震が続いていたことがわかる。

古代ポンペイの住民の生命を奪ったのは、堆積した軽石による屋根の倒壊や火砕流だけではなく、噴火にともなう地震による建物の倒壊も致命的であったようである。2023年の発掘調査で新たに発見された2体の遺体は、建物の一部が崩壊して下敷きになったことによる複数の外傷で死亡したことが人類学的分析でわかった。