八雲の人間関係は“狭く深いタイプ”だった

この英語直訳式の一種の独特の言葉は、現在は「ヘルンさん言葉」として伝わっている。「テンキコトバナイ」といえば「天気は申し分なくよろしい」というわけである。

そうなったのは、日本語学習に時間を割かれることを嫌ったのに加えて、八雲自体が他人に時間を使うことを嫌ったことも大きい。八雲の交際嫌いの証言は多く、セツ本人も次のように語っている。

ヘルンは面倒なおつき合いを一切避けていまして、立派な方が訪ねて参られましても、「時間を持ちませんから、お断りいたします」と申し上げるようにと、いつも申すのでございます。ただ時間がありませんでよいというのですが、玄関にお客がありますと、第一番に書生さんや女中が大弱りに弱りました。(小泉節子「思い出の記」『小泉八雲』恒文社 1976年)

とにかく、自分の学びの時間を妨げられることに対しては「潔癖者」のようだったとセツは評している。とはいえ、松江の時代には親しい友人を招いて宴会を催すこともあったというから、単なる人嫌いというわけではない。むしろ、心から信頼できる少数の友人とだけ深く付き合う、現代で言えば「狭く深く」タイプの人間だったのだろう。