今年度クマに襲われて死亡した人は13人にのぼり、過去最多の被害となっている(11月17日時点、環境省まとめ)。クマ問題を取材するライターの中野タツヤさんは「クマは『餌付け』によって人間を恐れなくなり、襲ってくる危険性が高まる。特に『迷惑観光客』による餌付け行為が世界的に問題視されている」という――。
ヒグマの親子=2025年7月13日、北海道知床半島
写真=時事通信フォト
ヒグマの親子=2025年7月13日、北海道知床半島

観光客の危険行為で「クマが人間を恐れなくなる」

「ルールを無視し、無謀な弾丸登山を試みて、レスキュー隊に救助される」
「写真を撮るために勝手に私有地に侵入する」
「京都の街にゴミを捨てている」

などなど、日本各地で「迷惑観光客」による被害が相次いでいる。

ゴミの増加や落書きも困ったものだが、中でも非常に危険な行為と言えるのが、北海道をはじめとする、クマ生息地で繰り返されている迷惑行為だ。

ヒグマをはじめとする野生動物への餌付け、および、無謀な接近行為は、迷惑観光客本人だけでなく、地域住民全体の命を危険にさらす行為と言える。

ヒグマに餌付けをすると、過度に人に慣れて、人間を恐れなくなり、襲ってくる危険性が高まってしまうのだ。そのため、国立公園内での餌付け行為には罰金が課されるなど、各地で餌付けを禁止するルールが策定されているが、あえて無視する迷惑観光客も後を絶たない。

2025年8月14日、北海道・知床半島の羅臼岳で登山客の男性がヒグマに襲われ死亡する事件があった。この事件の背景事情として、知床を訪れる観光客の中に、ヒグマに餌付けをしていた者がいる可能性を、以前の記事で指摘している(参照〈観光客がヒグマに「スナック菓子」を与えている…知床・羅臼岳に「殺人グマ」が出現した恐ろしい背景事情〉)。

知床の事件では、餌付けした観光客は被害にあわず、不幸にも別の登山客が犠牲になってしまった。一方で、海外ではルールを無視した観光客自身が被害にあうという、まさに自業自得としか言えないような事件も起こっている。