米国とカタールからの“外圧”

他方で、いわゆる“外圧”が強まったことも、EUがESG規制の緩和に取り組む一因となっている。化石燃料、特に天然ガスの脱ロシア化を掲げるEUは、第三国からいわゆる液化天然ガス(LNG)の輸入を増やしてきた。うち大口の輸入元である米国とカタールが、LNG輸出の妨げになるとしてCSDDDの大々的な緩和をEUに要求する。

これまでの天然ガスの脱ロシア化の結果、EUの天然ガス輸入に占める米国産の割合は急上昇しており、カタール産も今後は増加が見込まれる(図表1)。裏を返せば、ロシア以外の国からLNGを輸入するからこそ、EUは脱ロシア化を進めることができる。そうした立場にあるEUに、LNGの輸出に応じる国にまでESG規制を課す資格があるのか。

【図表1】EUが輸入する天然ガスの国別内訳
(注)3カ月後方移動平均(出所=ユーロスタット)

米国やカタールの主張は、概ねこのようなところである。当然、力学関係はEUに不利と言わざるを得ない。ところで、この構図からは、そもそもEUのESG規制が、パイプラインを経由して輸送されるロシア産の安価な天然ガスの利用を、暗黙の裡に前提としていたということが透けて見える。その楽観的な前提が崩れてしまったわけだ。