米国とカタールからの“外圧”

他方で、いわゆる“外圧”が強まったことも、EUがESG規制の緩和に取り組む一因となっている。化石燃料、特に天然ガスの脱ロシア化を掲げるEUは、第三国からいわゆる液化天然ガス(LNG)の輸入を増やしてきた。うち大口の輸入元である米国とカタールが、LNG輸出の妨げになるとしてCSDDDの大々的な緩和をEUに要求する。

これまでの天然ガスの脱ロシア化の結果、EUの天然ガス輸入に占める米国産の割合は急上昇しており、カタール産も今後は増加が見込まれる(図表1)。裏を返せば、ロシア以外の国からLNGを輸入するからこそ、EUは脱ロシア化を進めることができる。そうした立場にあるEUに、LNGの輸出に応じる国にまでESG規制を課す資格があるのか。