チャンスは「未成熟の仕事」にあり
仕事は時代の要請とともに変わっていくものである。新しく生まれる仕事もあれば、消えてなくなっていく仕事もある。なくならないまでも、仕事の価値が目減りするものもあれば、逆に高まるものもある。
ピーター・F・ドラッカーは「仕事とは、一般的かつ客観的な存在である」と定義した。どの仕事を選ぶかは、それぞれの個人の主観的な選択であるが、仕事そのものは人間とは無関係の客観的な存在である。
私が選択した経営コンサルティングという仕事は、比較的新しい仕事だ。日本で認知されるようになったのは、ここ20年ほどのことである。私が経営コンサルタントに転身した頃は、まだどこか胡散臭い仕事というイメージがあった。実際、以前勤めていた会社の先輩や同僚たちの多くは私の行く末を心から心配してくれた。
当時、自前主義の強い日本企業は外部からアドバイスを求めるということ自体に抵抗があり、需要も限られていた。また、供給サイドのコンサルタントの実力も大したことはなかった。
やがて日本企業も外からの視点、客観的な意見というものに徐々に重きを置くようになっていった。まだ欧米ほどではないにしても、大手の日本企業は必要に応じてコンサルタントを使うことに抵抗はなくなりつつある。
それに伴い、経営コンサルティングという仕事もメジャーになっていった。特に、外資系コンサルティング会社の人気は高く、憧れの仕事のひとつになった。
ローランド・ベルガーの会長を務める私がこんなことを言うのは気が引けるが、「人気になった仕事は要注意」だ。未成熟で、確立していない仕事だからこそチャンスなのであって、“人気稼業”となってからでは競争に打ち勝つのは容易ではない。
私が経営コンサルタントという仕事を25年も続けることができた要因のひとつは、まだ未成熟段階の仕事を選択したことにある。未成熟にリスクは付き物だが、だからこそチャンスも大きい。仕事を選択するうえで、「成熟度」の吟味はとても重要である。