タワマンブームの背景
2025年9月16日に発表された最新の基準地価は、全国平均で前年比1.5%増と4年連続の上昇を記録し、大都市圏ではとりわけ強い地価の上昇傾向が報じられた。
こうした都市部の地価高騰には、2002年の都市再生特別措置法制定を契機とした建築規制緩和が大きく影響し、官民の大規模な再開発や高層マンションの建設ラッシュを促した経緯がある。
この政策の背景には、戦後の都市交通網の発達や自家用車の普及により都市と郊外の移動が容易になり、さらに通信技術の進歩が職住分離を後押ししたことで、1970年代以降に顕在化した「ドーナツ化現象」――すなわち郊外への人口流出と都市中心部の空洞化――への危機感があった。
都市全体の再構築を目指すなかで、都心部の再生を中心に据えた国家的都市政策のもと、現在のタワーマンション・ブームも規制緩和の流れから生まれた。加えて、コロナ禍からの経済の回復期には円安、金融緩和や海外投資資金の流入、インバウンド消費の拡大も相まって、都心部での再開発は一層加速している。
人口は、毎年一つの県が消えるペースで減少
しかし、もはや地価高騰の持続は期待できない。2008年から始まった日本の加速的な人口減少は、もはや都市部の人口ですら維持できないほどに進行しているからだ。昨年は1年間で総人口が55万人(日本人のみでは90万人)減少(注1)し、現時点で毎年県が一つ消えるほどのペースだ。
2015年以降、出生率は加速度的に低下し、反転の兆しもない(注2)。昨年の出生率1.15は、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)による日本の将来人口の「低位推計」が想定する1.13と同水準だ(注3)。
この悲観的なシナリオでは、総人口は2020年の1億2600万人から2050年に1億人を下回り、2100年には5000万人を割り込む。なお、将来も出生率が一定とするこの推計は、近年の急激な出生率低下を踏まえれば、すでに楽観的であると言わざるを得ない。
国連によれば、2050年には世界全体の出生率も人口置換水準を下回り、世界的にも人口減少トレンドが鮮明になる(注4)。移民やインバウンド需要でさえも早晩縮小に転じるはずだ。

