静子の日記からパクった『斜陽』のキャッチコピー

しかし彼がしたのは、実に3年ぶりに静子を呼び出し、前から書かせていた「静子の日記がほしい」と迫ったこと。つまり、日記を自分の作品の下書きとして使用する代わりに「1万円あげる」(現在の100万円程度)と申し出たのです。

当初の『斜陽』は、津軽の大地主である太宰の実家の没落を描いた私小説になる予定で、「小説の結末は、(太宰と静子をモデルとした登場人物)二人の死」でした(太田・前掲書)。それが大変更されて現行の『斜陽』になったということは、よほど静子の文才を太宰が当てにし、利用したという証明なのです。