両親は離婚、乳母からケルト民話を聞いて育つ

そんな境遇の子どもを育ててくれたのは、資産家だった父方の大叔母、サラ・ブレナンです。

キャサリン・コステロという、子ども時代をともに過ごした乳母の影響が、八雲の精神世界を育みました。彼女が夜ごと語ったアイルランドの物語は、ファンタジーを求める子どもの心の糧になります。感じやすい子で、顔のない幽霊を見る、という恐怖体験もしました。この時に心に染みついたイメージは来日後、「むじな」という東京・赤坂で暗躍する、のっぺらぼうを描いた怪談の執筆につながってゆきます。