日本人の企業選びや働き方はどう変わるのか。変わるためには何が必要なのか。

会社を設立する前、私はボストンコンサルティングをはじめ、複数の外資系コンサルティング会社から内定をもらっていました。しかし、その頃に訪れたシリコンバレーで同世代の優秀な人材がどんどん起業する文化に刺激を受け、就職するか起業するか迷うようになりました。

決断の決め手は、尊敬するMITメディアラボ副所長・石井裕先生の「mement mori(死を思え)」という言葉でした。高収入や不自由のない暮らしより大切なことがあるのではないか。そう思い、内定を辞退。みなし法人として続けていた事業を2012年4月に法人化しました。

その当時は、日本の伝統的大企業に対する印象もよくなかった。客観的に見て、年功序列・終身雇用という制度に縛られているように感じました。また、どんなに優秀でも初年度の年俸が外資系企業と2倍も3倍も違う。早く「成長」したいという気持ちが強い人であればなおさら、こうした日本企業を選択しないでしょう。彼らにとって、外資系以外の選択肢は、DeNAやグリーなどの新興企業、1年目で海外に行かせてくれるようなベンチャー企業ということになります。それ以外には自分で会社を興すことくらいしかない。

最近、起業家の数も徐々に増えていると思います。起業家を生み出すための環境も整備されつつある。シードラウンドのファイナンス(創業時の資金調達)の機会も以前より多くなり、アクセラレーターと呼ばれる人たちが起業家を育て上げる仕組みも現れています。そのなかで実際に起業する人の数がアメリカのようにもう1ケタ増えれば、会社や働き方をめぐる様々な価値観も変化していくのではないでしょうか。

マナボ社長 三橋克仁

スマートフォンやタブレットを利用した家庭教師サービス「mana.bo」を運営。現在、東京大学大学院修士2年在籍。
(稲泉 連=構成 的野弘路=撮影)
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