群衆に宿る「宗教的感情」

アメリカの場合、トランプを支持して「MAGA」の帽子をかぶる人たちも、テレビの街頭インタビューや家庭を訪問する取材の内容を見る限り、皆がトランプのように自己中心的であるわけではなく、「プラウド・ボーイズ」のような極端な集団を別にすれば、普段はごく普通の市民として暮らし、周囲の人にも親切だったりするようです。

けれども、トランプを支持する集団という一つの「群衆」となった時、その考え方や行動は、個人としてのそれとはまったく別のものに変化してしまう。一人の個人であれば、鵜呑みにしないような「ウソに基づく言いがかり」でも、「群衆」に埋没した瞬間から、それを「事実」だと確信し、それに準じた行動をとってしまう。そんな確信の背景には、特定の指導者に対する「宗教的感情」があると、ル・ボンは指摘します。