「ここが家だよ」と伝えるのは逆効果

認知症が進行すると、時間や日付、場所の感覚が次第にあいまいになっていきます。

自分が今どこにいるのか、誰といるのか、今どういう状況にいるのかもわからなくなることがあります。たとえ目の前にいるのが娘や息子、親戚であっても、顔が分からなければ、「知らない人」と感じ、安心できずに「帰らなければ」と立ち上がってしまうことがあるのです。

どこに帰るのかは、本人にも分かっていないかもしれません。まるで、体に染みついた帰巣本能のように、理由もはっきりしないまま「家に帰らなければ」という衝動に駆られてしまうのです。「帰りたい」という言葉の奥には、「安心したい」「ほっとしたい」「自分をわかってくれる人のそばにいたい」という切実な思いが込められているのかもしれません。