「あんぱん」では描かれなかった熱愛時代

特に「あんぱん」では、嵩とのぶが故郷の高知県で出会った幼なじみという設定なので、実際には大人になってから高知新聞社の同僚として知り合った、やなせとその妻となる小松暢との恋愛とは、かなりちがう。同じ雑誌の編集部にいたり、東京出張に行った際にやなせが食あたりになってのぶに看病されたりしたというエピソードはドラマにも反映されていたが、実際には、2人が付き合うかどうかという段階では暢のほうが積極的だった。

『アンパンマンの遺書』で最も印象的な場面は、やなせとふたりで取材帰りに夜の街を歩いているとき、暢が「やなせさんの赤ちゃんが産みたい」と言ったところ。暢の性格がよくわかる情熱的な告白で、ぜひここもドラマで再現してほしかったと思う。