韓国発のタテ読みフルカラー電子マンガ「ウェブトゥーン」のドラマ化が相次いでいる。メディアジャーナリストの長谷川朋子さんは「独自のストーリーやキャラクターを売りにしてきたが、市場の成長率は鈍化の兆しを見せている。そんな中、日本の資本が入ったウェブトゥーン制作スタジオが登場し、日本でドラマ化する事例も出てきている」という――。

市場規模は6000億円、年収数億円の作家も

国内を越えて海外で市場を拡大させるのが、韓国が得意とするビジネススタイルだ。「ウェブトゥーン」と言われる韓国が生んだタテ読みフルカラーの電子マンガも、国際市場で持つ影響力は大きい。市場規模は日本円にすると、今や約6000億円に上る。

NAVERやカカオなど韓国トップクラスのIT企業がウェブトゥーンプラットフォームを世界市場で拡大させてきたことで、“稼げる作家”も生んだ。市場が急成長した2021年〜2022年には連載枠を持つウェブトゥーン作家の平均年収は1000万円を超えていた。新人作家でも一攫千金を狙えるのは海外にも市場が広がっているからだ。現在でも年収数億円レベルの個人作家が多数いる状態という。

グローバルの累計閲覧数64億回を記録する大ヒット作品『女神降臨』の作家、ヤオンイ氏もその1人だ。「まるで漫画の主人公そのもの。美人すぎる」と言われるほどの美貌を持つ。

ウェブトゥーン大ヒット作品『女神降臨』の作家、ヤオンイ氏(右)。

ディズニーでさえウェブトゥーン作家を頼りに

財力の象徴として約4億ウォン(約4000万円)で購入したとされる赤色のフェラーリをSNS上で公開したこともある。ただし、派手な生活を送るなかで脱税疑惑の一部を本人が認めたことから、お騒がせ有名人としての印象も。それでも熱狂的なファンを持つスター作家として現在も第一線で活躍する。

巨大メディアのウォルト・ディズニーでさえもウェブトゥーン作家を頼りにする。現在、シーズン2が制作中のディズニープラスのドラマ「ムービング」はウェブトゥーン黎明期から活動を続けるカンプル氏の原作になる。

特殊能力を持つ親子の物語を軸にサスペンスとアクションを盛り込んだ内容が人気を得て、2023年に配信された前作(シーズン1)はディズニープラスのローカルオリジナル作品の中でグローバル1位となり、数々の賞レースを席巻した。

2024年に最も視聴されたディズニープラス韓国オリジナルドラマの中で最も試聴されたミステリードラマ「照明店の客人たち」もカンフル氏の原作だ。「ムービング」と同様にカンフル氏自らドラマの脚本も手掛けている。

ディズニープラスの世界ヒットドラマ「ムービング」の原作者カンプル氏(左から2番目)
筆者撮影
ディズニープラスの世界ヒットドラマ「ムービング」の原作者カンプル氏(左から2番目)