流れゆく水のようなもの

「勢い」の概念の源流は江戸時代の思想家・歴史家の頼山陽らいさんようにあると論じるのが、濱野靖一郎・島根県立大学准教授(日本政治思想史)だ。濱野は著書『「天下の大勢」の政治思想 史頼山陽から丸山眞男への航跡』(筑摩選書、2022年)で、頼山陽の説く「勢い」をこう説明する。

「それは流れゆく水のようなもので、どちらかに向かうのを止めることはできない。力ずくで押さえこむのではなく、進む方向を認識し、それに沿ったやり方で制御することが必要だ」(84〜86頁)

政治学者の丸山眞男は「つぎつぎになりゆくいきほひ[勢い]」という言葉を提示。『忠誠と反逆 転形期日本の精神史的位相』(筑摩書房、1992年)で「日本の歴史意識の古層をなし、しかもその後の歴史の展開を通じて執拗な持続低音(バッソ・オスティナート)としてひびきつづけて来た思惟しい様式」(333〜334頁)と説いた。