商業演劇としての歌舞伎の興行主は松竹だが、映画の配給が東宝であることも話題となった。東宝だからこそ歌舞伎俳優ではない吉沢亮、横浜流星を主役に配役でき、古い因習が残る歌舞伎界を舞台に自由な発想で映画を作れたともいえる。

配給は東宝だが、アニメーションを中心に幅広いビジネスを手がけるアニプレックスが設立したミリアゴンスタジオが製作幹事を務めている。美術監督は種田陽平氏で、撮影はソフィアン・エル・ファニ。原摩利彦の音楽も映画を盛り上げる。種田氏の指揮のもと、東映京都撮影所の大道具チームが全般的に美術面を担当し、歌舞伎の舞台装置は「たつた舞台」が担当した。

映像で描かれた舞台と舞台裏の魅力

本作には、多種の劇場が登場する。実際の劇場も使われているが、喜久雄が晩年に立つ「日乃本座」は、空襲で消失する前の歌舞伎座をイメージして作られたものだ。外観、ロビーは現存する「びわ湖大津館」が使われ、内部の舞台・客席は東映京都撮影所のスタジオに設営された精緻なセットで再現されている。