手軽な運動で自立した生活を送る

次に寝たきり対策について考えていくことにしよう。

いま4人に1人が高齢者であるが、介護や支援が必要な高齢者は6人に1人もいるという。大阪府富田林市で宮田医院を営む整形外科医・宮田重樹院長は、寝たきりの予防に取り組んできた。その過程で、衝撃的な発見があった。

「ロコモチェックという運動機能を測るチェック項目(別表参照)があります。これは、ロコモーティブシンドローム(運動器症候群)、つまり運動器の障害によって、介助・介護が必要な人や、将来寝たきりになる危険性の高い予備軍を見つけるためのものです。当初は65歳以上を想定していたのですが、診察でチェックするうちに、30、40代でもひっかかる人が出てきたのです」

(ロイター/AFLO=写真)

通勤はクルマで、仕事はデスクワーク中心というように、ほとんど運動しない……。そんな生活を20年以上も続けていると、ロコモの危険性が高まる。そうでなくても50代以降は、運動器の問題は急増するという。

寝たきりの原因で1番多いのは脳卒中だが、骨折や転倒も多い。運動器の機能が落ち、足腰が弱り、バランスも悪いと、そうしたケガをしやすくなる。

では、どうすれば予防できるのか。宮田医師の答えは明快、「運動」である。

運動といっても「筋トレ」でも、フィットネスクラブに通うことでもない。軽い運動に加え、日常生活動作を1つの運動として取り入れていく。その指標となるのが、「メッツ(METs)」で、運動や動作別に運動量が示されている。

たとえば歩行、軽い筋力トレーニング、屋内掃除それぞれ20分=3メッツ(M)、ゴルフ(カート使用、待ち時間除く)、体操(家で、軽・中程度)それぞれ18分=3.5M、自転車(時速16キロメートル未満)15分間=4M。これらを1週間のなかで加算していき、23Mを目標にする。ただ、3M未満の運動、具体的には乗り物での通勤、テレビの視聴(1M)、家の中での歩行(2M)などは加算の対象外となる。

「体というのは、動かさないと動かなくなる」と宮田医師はいう。これは「廃用症候群」と呼ばれ、寝たきりの直接の原因となるものである。したがって、日常生活では日頃動かさない筋肉や関節を動かす運動を習慣づけることが大切になる。次に職場や家で手軽にできる運動を紹介しよう。