つまり、ある間取りにすれば頭が良くなるという単純な解が存在しないように、場面についても絶対的な答えはないのです。重曹が泡立つ様子を見て化学に興味を持つ子供もいれば、アブラムシは苦手だという子供もいる。親はそういった反応を観察しながら環境をつくっていく。

建築家に具体的なイメージを伝える

もう1つ、子供の興味は成長とともに変わることも意識すべきです。子供はまわりに影響されやすく、昨日まで興味を持っていたことに急に関心を示さなくなったり、逆に急に新しいものに興味を持つことも珍しくない。そこは柔軟に対応したいところです。

中国には「孟母三遷(もうぼさんせん)」という故事があります。孟子の母親は、子の教育のために3回引っ越しました。実際に転居するのは難しいと思いますが、子供の成長に合わせて、場面を変えていく工夫は必要です。

遅かれ早かれ、最終的に子供は自分の部屋に閉じこもるようになるでしょう。それは成長の正しいプロセスなので、親は「一件落着」といって喜ばなくてはいけません。逆にいうと、それまでは子供に適切な場面を提供できるように、丁寧に子供を観察し続けなくてはいけない。それが親の役目です。

子供に用意してやりたい場面を想定できたら、次はそれを形にするプロセスに入ります。たとえば、家を購入する場合には、こう考えます。

注文住宅の場合は、自分たちが望む場面を建築家に直接伝えます。「こういう間取りがいい」と言うより、「お母さんの料理中も子供と会話をしたい」などと、具体的なイメージを伝えたほうが、建築家はがぜんやる気になって積極的にアイデアを出してくれるはずです。

もちろんすべての建築家が素晴らしいアイデアを持っているわけではありません。そこで、それを見極めるために、たとえば「頭寒足熱」というキーワードを投げかけてみる。