数学の難問は、教師になったつもりで黒板に書きながら解く
高校は学習院高等科ではなく、東京教育大学附属高校(現筑波大学附属高校)に進む。ここから邦夫氏は、いくつもの“秀才伝説”を残していく。高校3年時は校内模擬試験が3回あり、1、2回は1位。が、3回目は3位に落ちてしまう。邦夫氏は奮起一番、入試直前の駿台予備校の全国模試を受けてトップに輝く。
邦夫氏は「確かに、駿台模試の全国トップは、狙っただけに自分にとっての記念品。浪人生ではなく現役生がトップを取ったのは初めてではないでしょうか。でも、教育大附属はガリ勉を好まない気風の学校でしたから、私は通学途中の駅近くでパチンコをよくしていました」と笑う。
もちろん、これほどの成績は、名門・鳩山家の血筋という遺伝的な資質だけで達成できるものではないはずだ。能力や才能を開花させるための努力と精進が不可欠になってくる。
「例えば数学の問題なら、1メートル×2メートルくらいの黒板を買ってもらって勉強部屋に置き、自分が教師になったつもりで声を出しながら解いていきました。すると、机の前では歯が立たなかった難問がフッとひらめいて解けるようになる。また、『徒然草』や『源氏物語』などの古文は、現代語訳だけ読んで原文は見ません。こうやって全体をつかんでおけば、どこが試験に出ても大丈夫でした」
現在、邦夫氏と元タレントのエミリさん夫婦には2男1女がいる。長男の太郎氏は学習院、長女の華子さんは慶應、次男の二郎氏は青山学院の各大学の付属で学んだ。その後、大学は順に早稲田、慶應、杏林と、父親とは異なる学校に進んだ。
「私は子供たちに一度も東大を目指せと言ったことがありません。勉強して東大へ行けたらいいとは思いましたけどね。それも自己責任。心の内では孫にはと期待をしていますが、娘(華子さん)は海外の大学に行かせたいと言っていますよ」。邦夫氏はそう言って目を細めた。