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トヨタ・モーター・タイランド社長 棚田京一(たなだ・きょういち)
1954年、東京生まれ。東京外語大学タイ語科卒業後、旧トヨタ自販に入社。2009年6月からトヨタ・モーター・タイランド社長。12年4月、トヨタ自動車常務役員に就任。豪亜本部副本部長、トヨタ・モーター・アジアパシフィック社長を兼任。


 

トヨタ自動車がタイに本格進出してから今年で50周年になる。「昨年、タイの国は大洪水に見舞われるなど、50年の間にはいろいろな出来事があった」と振り返るのは同社のタイ法人(トヨタ・モーター・タイランド)の棚田京一社長。「なかでも最も忘れられないのは1997年のアジア金融危機のとき、トヨタは2番目の新工場を建設したばかりでしばらく危機的状況が続いた。それでもタイの可能性を信じ、投資を拡大させてきた」と強調する。

今年、タイの自動車生産台数は230万台に達する見通しで、このうちトヨタは88万台を計画。国内市場も前年より約8割増の140万台になる見込みで、販売面でも「タイでトヨタは50周年にふさわしい50万台以上を目指す」という。それぞれ過去最高となる。

トヨタは世界27カ国・地域で現地生産し、160カ国以上で販売しているが、4割近いシェアを占めるタイは、トヨタにとって世界で屈指の中核的な拠点。近い将来、タイでの生産を年100万台レベルに引き上げる方針だ。

その重責を担う棚田社長は11月8日、バンコクで開かれた50周年記念式典では約1800人の招待客を前に、原稿を持たずに流暢なタイ語でスピーチし、会場からは感嘆の声と盛大な拍手がおこった。大学での専攻がタイ語学科で、トヨタに入社後も6年間タイに駐在し、今回は現地法人のトップとして2度目の赴任。タイ人のディーラー経営者や工場の幹部社員らとぶっちゃけた話ができるほどの筋金入り。「タイとは歴史が古く友好の絆も深い。現在、日本車が9割を占めるが、この国の自動車産業の育成に、韓国勢などの外資の入り込むスキを見せないように守り抜く」と使命感に燃える。アジア戦略を強化するうえではうってつけのリーダーである。

(写真=PANA)
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