十分な睡眠時間をとらないと、翌日の作業効率は落ちる。それが続けば仕事や勉強にも影響して“バカ”になってしまうだろう。それでは、賢くなるためにはどんな睡眠をとればいいのだろうか。

一流の人間が睡眠にこだわるその理由

夜、ベッドにもぐりこんだ瞬間に寝落ち、朝までぐっすり快眠。そんな「ドラえもん」ののび太君級の深い眠りを享受できているビジネスパーソンは、日本にどれだけいるだろう。実際は疲労困憊なのに寝付きが悪く、夜中に何度も目が覚め、朝が来ても体は泥のように疲れている、そんな日々を送る人は多いのではないだろうか。「24時間戦えますか?」そんなCMが流れたバブル期はいざ知らず、いまや適切な睡眠が勉学や仕事の効率を上げることは明らかになってきている。上質な睡眠こそが、仕事と人生の質を左右するといっても過言ではないのだ。

2017年、ベストセラーになった『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)。睡眠生体リズムを研究する著者・西野精治氏は、同書で睡眠医学の総本山スタンフォード大学をはじめとする最新の睡眠研究の知見を紹介している。曰く、すでに一流のアスリートは睡眠の重要性を理解しベストパフォーマンスを出し、そのノウハウはビジネスにも応用できる。「睡眠時間を削ってでも仕事に邁進すること」が、いかに人体にも仕事の効率にも悪影響を及ぼすかを西野氏は論理的に説いている。

一方で、睡眠の重要性は理解できても、職場環境やシフトの組まれ方、繁忙期などで理想的な睡眠を実践できない状況下の人もいる。医師であり、同時にMBAを取得した医療機関再生コンサルタントの裵英洙氏は、自らも実践する超多忙な中での睡眠の「奥の手」を伝授する。一日のベストパフォーマンスは前日の眠りから始まっているのだ。

世界一「睡眠偏差値」が低い日本

ここに1つのデータがある。ミシガン大学が2016年に行った調査結果だ。これによると日本人の睡眠時間は100カ国中、なんと最下位。日本人の4割が6時間未満の睡眠時間で生活しているという。しかも問題は、日本人自らこの睡眠時間に不満を感じ、できるなら東京の人は7時間21分は眠りたいと考えていることだ。つまり日本人は毎日約1時間半近くも睡眠不足で、生活していることになる。

日本人の「睡眠偏差値」は低い。それだけ日本人が多忙な日々を送っているともいえるが、一方で睡眠に対してあまりに無頓着であることをも表している。

スタンフォードに隣接するのどかな米・パロアルト市に住む西野氏は、来日のたびに日本の都市の明るさに目がくらむという。

「24時間営業のコンビニや飲食店、街のネオンでまるで不夜城。『眠らない』街は、『眠れない』日本人を多く生み出しています」