これは「挙党態勢」ではなく「カツカレー政権」だ

非常に分かりやすい顔触れとなった。安倍晋三首相が2日に行った自民党役員人事と内閣改造によって決まった布陣のことである。内閣と党の枢要なポストは「お友達」で固め、その他の閣僚ポストは、9月20日の党総裁選で自分を応援してくれた議員の中から待望組を並べた。

総裁選で石破茂元幹事長を推したグループからは1人を入閣させたので形のうえでは挙党態勢にみえるが、実際は今までより「お友達」濃度が濃くなった。総裁選前にカツカレーを食べて安倍支持を誓い合ったメンバーによる「カツカレー政権」の様相だ。

初閣議を終え、記念撮影に臨む第4次安倍改造内閣の閣僚ら(写真=時事通信フォト)

麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、河野太郎外相、世耕弘成経済産業相、茂木敏充経済再生担当相……。主要閣僚は大半が留任した。安倍氏の盟友、お友達、側近、懐刀という形容詞がつく顔触れが並ぶ。外交、経済など重要政策は今まで通り気心知れた仲間で安全運転しようという意図が分かる。

党役員は、党規約を変えて総裁3選を可能にする道筋をつけた二階俊博幹事長、総裁選の出馬を見送った岸田文雄政調会長は論功行賞で留任。石破氏の支持に回った竹下亘総務会長は退き、安倍氏側近として頭角を現している加藤勝信氏が厚労相から横滑りした。憲法改正推進本部長には下村博文氏。選対委員長には甘利明氏が就任した。

改憲の要所に「偉大なるイエスマン」を起用

お友達を並べたところは主要閣僚と同じだ。ただ、党役員の顔触れは、安倍氏の野心が感じ取れる。安倍氏は残る3年の任期で憲法改正の実現に執念を燃やす。そのためには党内の改憲論議を完全にグリップするため、党内の憲法論議の司令塔である憲法改正推進本部と、党議決定する総務会のトップに下村、加藤の両氏を起用した。下村氏は特に憲法に精通しているというわけではないが、安倍氏の「偉大なるイエスマン」として改憲に向けて進んでいくだろう。

改憲を実現するためには来年の参院選で勝ち、衆参両院で3分の2を改憲勢力で維持し続けなければならない。そのために、党内ににらみがきき、調整能力もある甘利氏を選挙対策のトップに充てた。

つまり、同じ「お友達」でも主要閣僚の方は「安全運転で」という守りの姿勢、党役員の方は「何としてでも改憲を」という攻めの姿勢が感じられる。