一流企業のエース社員は、どうやって資料を作っているのか。今回、5つの企業にプレゼンテーションのスライド資料を提供してもらい、その作り方の極意を聞いた。第3回はブリヂストン・小路隆巨氏のケースについて――。(第3回、全5回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年7月30日号)の特集「できる人の資料術」の掲載記事を再編集したものです。

約3週間かけながらチームで作成していく

「BtoB」――。すなわち企業間取引では、一般に取引額が大きいだけに、より慎重な経営判断がいる。ブリヂストンの小路隆巨さんは、パワーポイントを活用したプレゼンテーションをテコに、そうした難しいBtoBの商談を成立させてきた。

1本300万円以上で利益率も高い。

小路さんは自分の仕事に関して、「鉱山や港湾向けにタイヤだけでなく、コンベヤーベルト、油圧ホースなどのゴム製品も納入しています。ITを活用してタイヤの空気圧や温度などの情報を管理し、タイヤ交換などのメンテナンスを効率化したりするサービスも始めました。幅広いソリューションビジネスの強化を図っています」と語る。

ソリューションの提供先は、豪州、ブラジル、チリといった海外の鉱山会社。仮説と検証にもとづいた現場での事前のヒアリングを重ね、お客さまの困りごとを的確に把握することが重要だ。「当然、双方には時間やお金といったコストがかかり、実のあるプレゼン内容が強く求められるのです」と小路さん。

また、多忙な経営者層が集うプレゼンだけに、全体の時間は約1時間と限られる。資料を約3週間かけながらチームで作成していく際に小路さんが一番に心がけているのが、「一目でわかること」なのだそうだ。

今回、小路さんが紹介してくれたのは、外部環境やお客さまの困りごとへの理解など“共通認識”を示した後の具体的なBtoBの提案資料で、まさに“肝”といえる部分の資料だ。ここではわかりやすいように、日本バージョンにしてもらった。

まず、提案内容の全体像を示す。そこではユーザー特有の経営課題を洗い出し、その内容を一般的な表現で顧客価値に置き換える。たとえば、ある経営課題を「コスト最適化」という顧客価値に整理し、「タイヤを長持ちさせる」という提案につなげる。「お客さまと当社が、共通言語で話し合えるようにするわけです。課題解決に向けた理解の土壌づくりのステップでもあります」と小路さんはいう。