手元が見づらくなる現象、「老眼」。最近ではスマートフォンやパソコンの普及により、若い人にもこうした症状で悩む人が増えています。

老眼やスマホ老眼の簡単なチェック法、老眼はなぜ起こるのかという仕組みについて解説した前の記事に続き(http://president.jp/articles/-/20380)、本記事では「もしかして老眼かも?」と思ったらやっておきたいこと、そして老眼にまつわる“都市伝説”について、彩の国東大宮メディカルセンターの平松類医師に聞きます。

目の構造。モノを見るときは、角膜から入った光を虹彩で調整し、毛様体筋が水晶体の厚さを調節してピンとを合わせる。「老眼」とは、加齢と共に毛様体筋が衰え、水晶体が固くなることによってピントの調節力が低下する状態のこと。

 老眼になりやすい人、なりにくい人はどこが違うのか

近くを見るときは毛様体筋が緊張(収縮)し、遠くを見るときには毛様体筋が緩む。近くを見るときのほうがピント調節力が必要になるので、毛様体筋の柔軟性が損なわれると手元が見づらくなる。

30代で見えづらくなる人もいれば、40歳をすぎてもまったく問題のない人もいます。中には60歳を超えても老眼にならないという人もいるそうです。この差はどこからくるのでしょうか。

「基本的に、近見作業が多い人、つまりパソコンやモニター画面を見る作業が多い人は通常よりも早いと思っていただいたほうがいいです。近くを見る作業が長ければ長いほど、老眼の症状は強く出やすいですね。あとは、糖尿病など全身に関する病気があったり、体調が悪い人はなりやすいです」

よく近視の人が老眼になったというと「近視の人は老眼にならないんじゃないのか」という方がいます。しかしそれは都市伝説だと平松医師はバッサリ。

「それは、近視と老眼の話がごっちゃになっているんですね。近視と老眼は、まったく別の要素です。『近視の人はメガネを外せば近くが見えているのだから、老眼にならない(老眼ではない)』ということはありません。もともと近視の人は遠くが見えづらいのであって、近くを見る能力に優れているわけではありません」

近視の人がまだ老眼ではないとき、近視用のメガネ(遠くが見えやすい)をかけた状態で手元を見るとちゃんと見えます。しかし老眼になって、近視用のメガネをかけた状態で手元を見ると、近距離でピントを合わせる能力が落ちているために見えなくなります。メガネを外すと手元が見やすくなるのは、レンズがなくなるため、余計な調節が不要になるからです。進行具合によっては、近視用のメガネを外しても、以前ほどは近くが見えなくなっていきます。

「近視なので老眼にならないと信じている方は、すでに手元のものを30cm以上離さないと見えづらくなっていても、『メガネを外せば見えるのだから老眼ではない!』と言い張ることが多いです」

手元が見えなくなり、不便になっても頑なに抵抗するというのは、ひとえに「老眼」という言葉の響きに問題があるからでしょう。しかし、見えないことで、日常生活や仕事に不都合が生じていることに変わりはありません。「抵抗すればするほど生産性を損なっている可能性が高い。早くメガネを作ったほうが生産性が上がりますよ」と平松医師は言います。