退職金を拠出するための資金の準備方法も会社によって異なるが、多くの会社は「企業年金」として金融機関で積み立てており、この段階で資金は会社のものでなく従業員のものであると定義される。会社が倒産して資産がゼロになった場合も積み立て分に関しては支給が保障される。が、全額を企業年金で準備している会社は稀なので、資金の準備方法についても確認しておいたほうがよい。
就業規則に明記された退職金規定を変更する際は、基本的に労働組合などを介した社員の同意が必要であり、一方的な変更は認められない。支払うかどうかは任意でも、一度制度をつくったらその段階で社員の権利(労働契約の一部)として確定する。もし会社が「業績が悪くて払えない」などと一方的に退職金の減額を通達してきても法的効力はないのだ。万が一、退職金規定廃止という事態になっても、その時点までに発生した退職金の権利(既得権)は保障される。
確定拠出型年金制度(401k)を導入している企業の場合、退職金の一部は給与に上乗せして前払い方式で支払われている。これを自己責任で各自が運用する仕組みだが、積み立て部分に関しては、中途退職しても60歳までは受け取れない。次の職場で401kの制度がないなど継続できない場合、積立金が60歳まで塩漬けになるリスクがある。また、退職ではなくとも、子会社や関連会社に出向・転籍を命じられた場合も、どの会社の退職金規定が適用されるのか、念のため確認しておきたい。