学校以外での学びを応援したい
――子供たちの感性を育むために、学校ではどんな取り組みをしていますか。
【高際】最近では高校生のうちから大学のゼミで指導を受けたり、外部のさまざまな専門家にお話をうかがったりする機会がすごく増えています。そうなってくると、子供たちが学外で「やってみたい」「挑戦したい」と望むことに対して、学校がどこまで寛容に、それを応援できるかが大切だな、と私は思っています。
【工藤】まさにそう。子供を学校に縛り付けない、ということですね。
【高際】そうですね。これはご家庭にもお願いしていることですが、どこで何を学び、体験するか、子供に選ばせてほしいと思っています。もちろん、その選択が安全で、かつ最適なものであるかどうかという判断は、ある程度すべきですが、大人がすべてお膳立てするのではなく、子供たちが選ぶべきだと思います。
【工藤】賛成ですね。
【高際】今の子供たちはすでに世界中の人とつながっています。ロシアの侵攻を受けていることから、「ウクライナの人と話がしたいのですが、学校に予算はありますか?」と言ってきた生徒もいます。詳しく聞いてみると、ネットでキーウ在住の方とつながったようで、学校を会場にして、その人と生徒との対話をしてみたい、というんですね。
【工藤】ほう。
【高際】すでに、段取りは全部済んでいるし、日本にいるウクライナの学生さんも呼んでいると。ただ、指定してきた日が、ちょうど学校の都合でその日は無理だと伝えたら、結局、会場も自分で探してやり遂げたようです。
【工藤】全部英語でやりとりしたんでしょ? 頼もしいよね。
【高際】はい。
【工藤】うちの生徒にも、スイスで行われる国際環境シンポジウムに参加したいという子たちがいた。ただ、時期が6月で、ちょうど期末試験と重なっていてね。
【高際】どうしたんですか?
【工藤】どうぞ、どうぞと、公欠扱い(欠席としないこと)にして行かせました(笑)。6月は世界的には夏休み。そのシンポジウムには各国から高校生が集まってくるようなんですが、日本は世界のスタンダードと違うので、それによって彼らのチャンスを奪うのはかわいそうですからね。
【高際】この4月にも、聖光の生徒さんに声をかけてもらって、渋幕(渋谷教育学園幕張中学校・高等学校)の生徒さんがヒューストンに行くらしいですね。
【工藤】そうそう。
【高際】私が「らしい」と言うぐらい、生徒主体になってきています(笑)。ただ、渋渋でも公欠扱いにはしますが、優遇はしません。期末テスト受けられないのであれば中間テストでがんばるとか、提出物を計画的に出すとか、そこは自分でマネジメントするように指導しています。
【工藤】うちの生徒は去年、「能登にボランティアに行きたい」と言うから、5人乗りのワンボックスカーを2台借りて、教師同行のうえで6人が行きました。そしたら、彼らが現地の人たちとネットワークをつくってきたようで、今度は「能登から商品を仕入れて、学園祭で売りたい」と。
【高際】広がっていますね。
【工藤】ほかにもウクライナから避難してきた子供たちを学園祭に呼んでコンサートをしたいとか、ウクライナの工芸品を作るコーナーを設けたいとか、とにかくいろんなアイデアを出して、自分たちで企画しました。アフリカのフェアトレードコーヒ豆を売りたいので、現地まで行きたいっていう子もいたけど、さすがにそれは治安の問題で諦めさせました。
【高際】コーヒー豆については、うちの生徒も「売り上げを現地の子供たちの医療支援に役立てたい」とがんばっていましたが、なかなか現地に行けないのでやきもきしていましたね。それでも何かやりたいと、ニュースレターを作って、多くの人に知ってもらう活動をしています。最近では、こういった体験をもとに自分たちで教材を作って、近くの小学校の探究学習の時間に、出前授業をしている生徒もいます。(以下、後編へ続く)