多くの人にとって、現実的な方法は再雇用でしょう。会社に長くしがみつけば、それだけお金を蓄えられるメリットもあります。

「しがみつく」と聞くと、いやいや働くようなネガティブな印象を持つかもしれません。それではダメです。再雇用されるためには、自分自身がポジティブに仕事をできなければなりません。

確実に再雇用されるのはどのような人材か。3つのチェックポイントがあります。

1つ目は社「内」で支持されているかどうか。2つ目は、社「外」で支持されているかどうか。3つ目は、自分のやりたい仕事があるかどうか。チームのメンバーや顧客から頼りにされていれば、会社も簡単にあなたを外すことはできません。

もし、この3つが欠けているのなら、定年までに改善する努力をしましょう。信頼関係をあらためたいのなら、まずは前述の「3つの自己否定」をしたうえで部下や同僚と接してみてください。

ただし、いつまでも会社が再雇用してくれるわけではありません。ある程度年齢がいった後も働き続けたいのであれば、個人事業主になることが近道です。要するに、一人親方になる。そして雇用関係が終わった会社から、新たに業務を請け負っていくのです。定年退職者への業務委託は会社側にとっても、仕事を任せる相手がどんな能力を持ち、どの程度信頼できるかがわかっているというメリットがあります。

こぢんまりした話が多いな、と感じられる方がいるかもしれません。40代までは「もっと大物になるんだ」と言っていてもよいのでしょう。しかし、50代に入ってもまだ本来の自分はこんなものではなく、地位も収入ももっと高くあるべきだと思っていると、人生が不幸になってしまいます。

最近、神戸女学院大学名誉教授の内田樹先生が、自分はこれほどの者で大したことはないと思ったほうが楽に生きられる、という趣旨のことを語っておられました。まさに知命の年というように、50代はいい意味で自分の限界を知るべき時期といえるでしょう。

フレイムワーク・マネジメント代表 津田倫男
一橋大学卒業、スタンフォード大学MBA。都市銀行、外資系ベンチャーキャピタル代表などを経て独立。著書に『老後に本当はいくら必要か』など。
(構成=宮内 健 撮影=上飯坂 真)
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