家にモノをため込んでしまう人がお金持ちになれない理由も、結局は整理整頓や管理ができないからなのだろう。どこに何があるのかがわからないから、「ここにあったのに買ってきちゃった」と無駄遣いを後悔する。それに不要不急のモノを衝動買いして、思い切って捨てられないままため込み、余計に整理整頓できなくなるという悪循環に陥る。
私の手元に面白いデータがある。日用品大手のライオンがトイレ掃除の状況を調べたもので、いつもきれいな“ピカピカトイレ層”の世帯年収は平均で542万円。一方、手入れが行き届いていない“残念トイレ層”のそれは454万円で、90万円近い差が出たのだ。同時に段取りのよさについても尋ねた結果、そう思う人の割合は前者75%、後者27%と大きく開いた。段取りがよければ心にも余裕ができ、お金にもマメになれるのかもしれない。
また、意外と無視できないのが保管コストである。「収納部屋が広くていい」と喜んでいる人がいるが、本来余計なモノを買い込まなければ必要のない部屋。つまり、それだけ土地や建物のスペースに無駄なお金を費やしているわけだ。最近では家に収まり切らなくなった荷物を置いておく貸し倉庫サービスが人気だというが、これなど何をか言わんやである。
逆に、お金を貯められる人は本当に必要なモノしか買わず、シンプルライフを貫いている。だから震災にあっても実損の被害を抑えることができる。きっと賢いお金持ちは、そうやってリスクに身軽に対処できるように、無意識のうちに行動しているのだろう。ぜひ見習いたいものである。
山口県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーに。「家計の見直し相談センター」では、2001年の設立以来1万3000世帯を超える家計の相談を受けてきた。