※本稿は、藤原和博『60歳からの教科書』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
時間の使い方は「図」を使って考える
どのように過ごすと、充実した人生を送れるのか。
考えるための武器は、次の図解です。複雑な問題ほど、図にして構造的にアプローチすると本質が見えてきます。
ここでは、「2×2マトリクス」を用います。コンサルティング会社がよく使う図です。
この図のポイントは、それぞれがトレードオフの関係になるように軸を設定すること。トレードオフとは、「一方を選べば、他方を選べない」関係のこと。どんなに複雑なものごとでも、初めの一歩は「トレードオフの2軸に分けること」です。
縦軸と横軸を、紙の中央に書いてください。
どうしたら、人生60万時間を充実させられるか。この2軸は、何にすればいいでしょうか。もちろん、正解はありません。ただし、考えるテーマは「時間」ですから、それぞれの軸も時間に関する事柄を選びます。
私の場合は、縦軸の上部を「個人的な時間」、下部を「組織的な時間」としてみました。さらに、横軸の左側を「処理的な時間」、右側を「編集的な時間」としてみます。
こうして目に見える図にすると、自分の望みが次第に輪郭を帯びてくるでしょう。
時間とは、いわば人生の舞台装置
「右上のスペースが魅力的だな。〈個人的〉で、〈編集的〉な時間を充実させると良さそうだな」
そう思えてきたりもします。ただ、会社や組織で一所懸命働いてきた人であればあるほど、組織的で処理的な時間に多くを費やしてきたのではないでしょうか。左下の領域ですね。
「よし。これからは、左下から右上に、時間の使い方を変えていこう」
そんな決意ができたなら、心から祝福したいと思います。2×2マトリクスで目指す境地が見えた時点で、あなたの「人生の時間割」はすでに変わり始めているのです。
時間とは、いわば人生の舞台装置です。どのように使うか。それが、演目自体の良し悪しに影響します。「時間は過去を忘れさせる三途の川の水だ」という大作家の箴言もあるほど、人の感情さえ左右できる力を持っている。60歳からは「時間の使い方のプロになるための人生だ」と言ってもいいくらいです。真剣に「時間」について考える意義が大いにあるのです。