“優秀な人”ほど苦労する「時間の断捨離」

2×2マトリクスを使って、左下から右上への移行を決めましたね。

次に考えるべきは、その「人生の時間割」の移行を実現させるための具体的な方策です。

時間の質を変える最も有効な方法は、断捨離です。

個人的で編集的な自分の時間を新しくつくるためには、これまでの習慣をいったん断ち切ること。

「減らす、やめる、断る」。要するに「時間の断捨離」を決行するのです。まずは組織的で処理的な他人の時間の断捨離から。

これは長年、組織で働いてきた人には、想像以上に難しいことです。組織内で順調に昇進してきた“優秀な人”であればあるほど、苦手でしょう。

時計とカレンダー
写真=iStock.com/Nuthawut Somsuk
※写真はイメージです

組織の慣習について、ここでちょっと考えてみましょう。

企業の中で偉くなればなるほど、仕事の老化現象が進みます。現場は部下に任せ、その成果を管理するのが上位職の仕事だからです。30代で課長職となってチームを率いる頃から、「したい仕事」と「するべき仕事」が乖離かいりしていくのが組織の常です。

そうしていつの間にか「個人的な時間」の6〜7割が「組織的な時間」に侵食されていきます。たとえば次の3つの時間について、あなたはどのように扱っていますか。

1 部下との同行営業や顧客接待。これには社内接待も含まれる。
2 部下の査定や人事問題。これには元気のない部下を盛り上げる飲み会も含まれる。
3 会議と根回し。これには関連部署との社内調整も含まれる。

結婚式は出ない、葬式もあまり行かない

社内接待とは、いわゆる「社内飲み」です。これら3つを称して、「SSK比率」と私は呼んでいます(「接待」「査定」「会議」の頭文字で「SSK」)。たとえば、会社の取締役のスケジュールを見ると、SSK比率が9割に達する人もいます。

要するに、組織で働くとは、「個人的な時間」を果てしなく提供していくこと。善し悪しを言いたいのではなく、自覚しているか否かがポイントです。自覚できていればしめたもの。この機に捨てればいいのですから。つまり、左下から右上へと移行する断捨離とは、SSK比率を下げていくことなのです。

次に、公私の「私」の面で考えてみましょう。

あなたの日常生活において、「減らす、やめる、避ける、断る、逃げる」ことができる場面はどれくらいあるでしょうか。思いめぐらしてください。けっこう、あるはずです。

たとえば、私は結婚式に出ないことにしています。その代わり、親しい人から結婚の報せを受けた場合は、2人を個人的にお招きしてワインでも飲みながら、ゆっくりと話を聴くスタイルにしました。葬式には、本人と親しかった場合や、亡くなられた親御さんの顔をよく知っている場合以外は出席しません。これが自分のルールです。