ヤマメやニジマスなどのサケ科の魚の性染色体はヒトと同じXY型でオスはXY、メスはXXである。精原細胞は2nの細胞で、XYを有し、これが減数分裂して精子や卵になるときにXまたはYのいずれか一方の性染色体だけが精子や卵に入る。精子にX型とY型があるのは当然として、はたしてY型の卵が生じるのだろうか(通常の卵はすべてX型である)。それともX型だけが正常な卵に成長してY型は育たないのだろうか。あるいはY型の卵が育つとしてX型の精子と合体した受精卵はオスになるのだろうか。そうだとするとYが卵から来てXが精子から来るという不思議な話になる。

それはともかくとして、冷凍精巣を他種に移植して個体を発生させることができるならば、マグロの精巣を冷凍してサバに移植してサバからマグロを作ったり、絶滅危惧種の魚の精巣を冷凍保存して、いざというときに種を復活させることもできる。

エッ!? なんですか。ヒトの冷凍精巣をサルに移植してヒトが作れるかって。それはちょっと無理でしょうね。

池田清彦
生物学者。1947年生まれ。早稲田大学国際教養学部教授。生物学の観点から、社会や環境など幅広い評論活動を行う。著書に『ほんとうの復興』(養老孟司氏との共著)、『生物多様性を考える』『アホの極み 3.11後、どうする日本!?』などがある。昆虫採集が趣味。
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