ちなみに、国境を越えた「子の連れ去り」への対応を定めたハーグ条約では、外国へ連れ去られた子を元の居住国へ返還することを義務付けているが、現在、日本は同条約を批准していない。かつ日本人の親が、外国人配偶者に無断で子を日本に連れ帰る事例が後を絶たないことから、国際的な批判を浴びている。

海外では結婚前に、離婚した場合の双方の義務・権利等を定めた婚前契約を交わすケースが少なくない。実は、日本の民法756条にも「夫婦財産契約」の規定があって、夫婦の財産の帰属や、生活費の分担についてあらかじめ定めることができる。

ただ、外国のそれと違って離婚時の諸条件は含まれていない。また婚姻届け出前の締結・登記が必要で、婚姻後は原則変更できないなど使いづらい面があって普及はしていない。

母親が親権を得た場合でも、父親には面会交渉権がある。親権を得た相手方に対し、「ときどき子に会わせてほしい」と要求する権利だ。離婚協議の際、「毎週日曜日に◯時から◯◯の場所で面会させる」といった、具体的なスケジュールが決められていれば、親権者にはそれに従う義務が生じる。親権を失う側は極力、具体的な面会の手順を文章化しておくことが望ましい。

ただ、離婚後、わが子にまったく会うことができない父親は、全国で20万人に上るとも言われる。母親が合意内容に従わず、子を父親に会わせようとしなかった場合、裁判所も無理やり面会を強制することができないからだ。せいぜい間接強制金が課せられる程度で、それも払わなければそれまでだ。仮に父親側が「面会させてくれないなら、養育費は払わない」と対抗しても、母親側が裁判所に訴えれば、給与振込口座を差し押さえられるなどして強制的に支払わされる。諸条件が父親側に厳しいことに変わりはない。

(構成=久保田正志 撮影=坂本道浩)
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