疲れているときあるある「言葉が出てこない」

本来使えるエネルギーよりもたくさんのエネルギーを使っていると、脳の省エネモードがオンになる。脳には、あなたの全要求に応えられるだけのエネルギーがないため、プログラムを強制的にシャットダウンしなければならない。最初にシャットダウンされるプログラムは、ヒト脳だ。その結果、論理的に考える力が働かなくなる。

そしてサルの出番となり、私たちはサル語しか使えなくなる。

ストレスを研究しているアレクサンデル・ペルスキーによると、ストレスにさらされている脳では、さまざまな領域同士の結合が弱まるため、論理的に考えることができなくなるという。実際に、この感覚を体験している人はたくさんいるはずだ。

スウェーデンの医療情報を提供するウェブサイト「ヴォードガイデン」に、こんな投稿があった。「私はひどく疲れているときに、脳のスイッチがオフになったように感じることがあります。何か考えごとをしていても、思考がぷつっと途切れたみたいで、最後まで考えることができません。見えているものを解釈するのも難しくなります。言いたいことを文章にするのもひと苦労で、言葉に詰まらないではっきり発音するのが大変です」

話が通じない相手は「ワニ脳」かもしれない

この省エネモードは、自動的にスイッチが入る。スマホは、電池残量が少なくなると画面にメッセージが表示されるので、省エネモードにするか自分で決められる。ところが、脳が省エネモードになるとき、選択の余地はない。強制的にオンになるだけだ。

レーナ・スコーグホルム著、御舩由美子訳『あいては人か 話が通じないときワニかもしれません』(サンマーク出版)

そして、ストレスが収まらないと、次の省エネモードがオンになり、サル脳もまた霧に包まれる。すると今度はワニの出番だ。ワニ脳のモードになると、私たちはワニ語しか話せなくなる。そのときの状況を処理するのに、ワニ脳しか使えなくなってしまう。脳の高次な領域にアクセスできなくなるのだ。

ヒト、サル、ワニすべての言語が使えるのは、ヒト脳にアクセスしているときだけだ。この場合、脳全体を使って、そのときの状況を処理できる。でもストレスを抱えているときは、使える言語が制限されてしまう。

職場にいるときは、ヒト脳の機能に頼り、3つすべての言語を使う必要がある。そのためには、ヒト脳にとどまれるよう、できるかぎり自分をケアすることが大切だ。

自分をいたわれば、3つの言語すべてにアクセスできる。目の前にいる顧客や同僚のモードが何であれ、つまり相手がヒト脳でも、サル脳でも、ワニ脳でも、臨機応変に対処できる。

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