陰謀論者はメディアを信じない

――なぜ陰謀論者やQアノン信者は主流メディアを信じないのでしょう?

陰謀論者はメディアに不信感を抱いている場合が多い。「誰の言うことも信じるな。専門家やメディア、政治家、誰もがウソをついている」と。特に保守派は、主流メディアの多くが非常に左寄りだと感じている。

だが実際には、主流メディアがリベラル派に仕切られているという考えはまったく真実ではない。1990年代初頭に一世を風靡したアメリカのトークラジオなどには、圧倒的に保守派が多い。現在でも、最も人気が高い米ケーブルニュース局はFOXニュースだ。保守系のポッドキャストやライブストリーム、ニュースレターのほうが左派系メディアの多くより、はるかにうまくいっている。

保守系メディアの視聴者や読者は、(リベラル系)主流メディアがウソをついていると頑なに考える一方で、(保守系)主流メディアの多くの情報源を信じる。保守系メディアは検閲されていると考え、いわゆる「主流メディア」とはみなしていないからだ。

メディアはQアノンの影響を見誤った

――「Qアノンとソーシャルメディアの相性は完璧」であり、「Qとトランプのつながりが一層周知のものとなるにつれ、トランプはQのミームやスローガンを定期的にシェアするようになっていった」と書いていますね(第9章)。テック大手は米連邦議会襲撃事件まで、陰謀論的な投稿に対し、十分な対策を講じませんでした。

そもそもQアノンは、「(トランプ氏の)敵」に対する裁きと処刑に特化したムーブメントとして始まったにもかかわらず、ソーシャルメディア大手の多くは、その成り立ちへの認識を欠き、注意を払わなかった。対策に時間をかける価値などないと考えていたのだ。保守派の投稿を「検閲」していると思われたくない、「左」に傾きすぎていると見られたくないという思惑もあっただろう。