発言その③

「候補者にカネなど出してはいない。政党支部に出している」

by 石破茂首相(自民党総裁)

【大人げなさ鑑賞ポイント】

10月27日に行なわれた衆院選の最終盤、自民党の派閥裏金問題で非公認になった候補側に、党本部が2000万円の「活動費」を支給したことが判明。野党は実質的な選挙資金の提供であり、「偽装非公認」だと強く批判します。ちなみに、公認候補の党支部に支給された「公認料」と「活動費」の合計も同じ2000万円でした。

内閣総理大臣・石破茂(写真=内閣官房広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons
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誰がどう見ても「裏公認料」ですが、石破首相は24日に広島市で行われた街頭演説でこの問題に触れ、「候補者にカネなど出していない。政党支部に出している」と主張。さらに「報道に負けるわけにはいかない」と責任転嫁をしつつ開き直ります。しかし、金権政治が批判されている中での臆面もない現金バラマキは、自民党の本質や思い上がりっぷりを見事に浮き彫りにし、受け取った側からも「ありがた迷惑」という声が上がりました。

その後の衆院選では、自民党と公明党の与党が過半数割れの大惨敗。この大人げない屁理屈に基づいた言い訳が、もともとの逆風にさらに勢いを与えたのは間違いありません。

このほか、元グラビアアイドルとの不倫がバレた国民民主党の玉木雄一郎代表が、涙を浮かべながら「私の妻はですね……日本一、夫のために地元を守ってくれる妻」(11月11日、不倫報道が出たことに対する記者会見で)と語ったのも、なかなか印象的でした。申し訳ないという気持ちに突き動かされてのことだとは思いますが、妻をホメている場合ではありません。「場違い」をものともしない大人げなさを発揮してくれました。

【芸能人&著名人編】

芸能人や著名人が発する「大人げない発言」も、また独特の香ばしさを醸し出しています。そっと振り返ってみましょう。

発言その④

「アハハハ…なんか、トドみたいなのが横たわっているみたいな。かわいいなあ」

by 和田アキ子

【大人げなさ鑑賞ポイント】

8月11日に放送されたTBS系「アッコにおまかせ!」の中で飛び出した発言。パリ五輪陸上女子やり投げで、和田が以前から大ファンだという北口榛花選手が金メダルを獲得したときの映像を見ながら、親しみと祝福の気持ちを込めてこう言いました。

悪気はなかったとはいえ、「トド」に例えてしまったことに対して、多くの批判を受けてしまいます。もしかしたら和田アキ子の中では、トドはラッコやイルカと同じように「愛らしい生き物」なのかもしれません。十分に大人げない、世間一般の認識を気にせず、独自の比喩をしてしまう「我が道を行く大人げなさ」のリスクを示してくれました。