発達検査の「3歳相当」は「3歳として扱え」ではない

少し乱暴ですが、例えば発達検査により、言語理解に関する項目で「3歳相当」という結果が出たとします。

単に結果に一喜一憂するのではなく、この結果は「この子に確実に(誤解なく)伝える際には3歳の児童が問題なく理解できる方法で伝える」ことを言っていると理解しましょう(これは3歳として扱えというわけではありません)。実年齢が3歳より上の場合、その子に降ってくる声かけは理解のレベルを超えることも想定されるので、「誤解する場合がある」と、やりとりする大人側が備えておくことを示唆するものです。

私はよく保育園や小学校でことばとコミュニケーションに課題を抱える児童のスーパーバイズを担当しますが、その際に子どもの実態について質問すると「(こちらの言っていることは)わかっていると思う」といった回答が返ってくることも少なくありません。

確かに、子どもはわかっているのかもしれません。ただし、持っている力を総動員してようやく理解ができる、という段階と、少しことばを聞くだけで意味を頭の中に思い浮かべることができる、という段階は同じではありません。こちらが伝えるべきもの(伝えないといけない内容)ほど、より少ないコストで理解ができる状況を作っておきましょう。

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できないことより、何ができるか

子どものよりよい発達を促すためには、「できないこと」を探すより「何ができるか」を探す視点を大事にしてください。さらに「できる・できない」のゼロイチ思考ではなく、どう援助を与えればできるようになるのか、それができるようになることでその子どもの生活がどう豊かになるのかという視点を持っておきましょう。

例えば「この子どもは3歳になって二語文が話せない。1歳くらいことばが遅れている」といった親の発言を考えてみましょう。これは典型的な発達からの差に注目した「できないこと」の視点ですよね。

その一方で「この子どもは話しことば(単語)と指さしを使って自分の要求を周りの大人に伝えることができる」と表現することもできるかもしれません。こちらは「何ができるか」の視点です。

川﨑聡大『発達障害の子どもに伝わることば』(SB新書)

この視点に立てば「実際に指さしと話しことば(単語)を使って二語文レベルの要求をしているのはどんな場面だろう」とコミュニケーション場面に考えがいき、例えばおもちゃを選ぶ場面での要求の手段を「おかわりちょうだいの場面でも使ってみよう」と、できることを生活の中で拡大してその子自身の生活を豊かにできます。

養育者は誰しも子どものよい発達を願っていると思います。その心配が養育者の視点をついつい「(同じ年代の子どもに比べて)この子はこれができない……」という「できないこと」に向かわせがちですが、子どもは知的発達の遅れがあろうと発達障害の特性があろうと一人ひとりその子の歩みで全員発達していきます。よりよい発達を引き出すためには一人ひとりの発達経過に沿った働きかけが重要です。

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