発達障害の特性のある子どもを褒めるとき、注意するときはどんな声かけが効果的か。立命館大学の川﨑聡大教授は「褒めても言うことを聞いてくれない。注意してもこちらが嫌がることを好んでする。これらは子どもの意図と大人の意図が掛け違っているからだ」という――。

※本稿は、川﨑聡大『発達障害の子どもに伝わることば』(SB新書)の一部を再編集したものです。

床に転がって泣いている子どもと顔を覆う母親
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怒るときには「○」を伝える

よく発達障害の子どもには「怒ってはいけない」「怒ると叱るは違う」といったことを聞きますが、これは誤解が大きいところです。「子どものすべてを受け入れてやりたいようにさせる」と考えているなら大きな間違いです。「何を言われているのかわからない状況で感情的に怒っても本人にも保護者にも何のメリットもない」が正確です。「ダメ」なことは「ダメ」ですし、「本人にわかるように」伝える必要があります。

ただ、皆さんも考えてみてください。何を言われているのかわからないところで厳しいことばが降ってくると、本当にどうしたらよいかわからず、ストレスだけがたまりますよね?

「×」を伝える際には、できる限り目で見てわかるように「○」を伝えることを心がけましょう。「椅子の上に立つな!」ではなく「椅子に座ります!」であり、いつまで座るのか見てわかるように伝えて、さらにそのあと何があるのかも見せておくと完璧ですね。

「わからない」状態に気づくのが難しいこともある

特に発達特性のある子どもたちは正直です。「この大人は自分にとってわかる手立てを用意してくれている」とわかると、その大人に対する注目は上がります。罰で子どもをコントロールするのはもってのほかですし、そもそもできません。「自分にわかるように伝えてくれる大人」かどうかを子どもは見極めます。

大人であれば「わからない」ということをことばにして相手に伝えることもできるかもしれませんが(それも相手と状況によりますが)、子どもは「わからない」ということを上手に伝えるスキルを持っていませんし、ときに自分のわからないという状態に気づくのが難しいことを念頭においておきましょう。

大人社会であればこういうボタンの掛け違いとその放置は喧嘩になったり、立場によってはハラスメントにまで進展することもあるかもしれません。要は徹底的に説明することが必要です。