考えても始まらないことは考えない

感情コントロールの大切な技術に、「考えても始まらないことは考えない」というのがあります。悪い想像は「考えても始まらないこと」です。

なかなか動けない人は、この「考えても始まらないこと」にしょっちゅうつかまっている人ということもできます。シミュレーションのクセがついてしまって、動く前にさまざまな展開や結末を想像しますから、それだけでもう腰が重くなってしまいます。

しかも落ち込んでいたり悲観的になっているときには、悪い展開や悲惨な結末しか想像できずに、「やっぱりやめよう」となってしまいます。そんなことを繰り返しているかぎり、いつまで経っても悪感情から抜け出せないのです。

「すぐに動くためには、考えても始まらないことは考えない」。まず、そのことを確認してください。そして身軽に動き出すためには、ジッとしているより動いたほうがましだと割り切ることです。

「こんなことなら動かないほうがよかった」とか、「家でゴロゴロしていたほうがましだった」とか思うこともありますが、実際には「来てみてよかった」「やってみてよかった」と思うほうがはるかに多いのです。

すべてのことが「なにもしないよりまし」

それに動いたほうが感情は刺激されます。たとえ「こんなことなら」と思うことがあっても、動いたほうが気持ちは外向きになるし、期待通りの結果は出なくても意外なものと出合えたり、なにか一つぐらいは印象に残ることがあります。動かなければなにも変化は起こらず、自分の感情と向き合うだけになります。

写真=iStock.com/Orla
※写真はイメージです

したがって、考え方としてはつねに「なにもしないよりまし」でいいはずです。

たとえば仕事がうまくいかなくて、やる気をなくしたビジネスマンは感情も沈みがちです。そういうときはふだんよりもっと動きが鈍くなっているでしょう。

和田秀樹『感情的にならない本』(PHP文庫)

アポを取るための電話やメールも「どうせムダ」、退社後の飲み会も「シラケるだけ」、昔の友人が誘ってくれても「疲れるだけ」、同僚の勉強会も「どうぞ勝手に」、なんにもやる気がしないならデスクの整理でもすればいいのに「そんなことしたって」とため息をつきます。

でもすべて、「なにもしないよりまし」です。

いつまでもグズグズと不調を引きずっているより、気晴らしでも慰めでもいい、あるいはちょっと刺激を受けるだけでもいいから、動いたほうがいいのです。

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