20時間未満、130万円超は踏んだり蹴ったり

サラリーマンの夫に扶養されているパートタイマー女性で、これまで106万円の手前で働き方を調整していた人は、今度は20時間の壁さえ意識すればよいので、あまり賃金のことを気にせず働けるようになります。したがって、働き控えを解消するという目的は、一定程度果たせそうです。しかし、130万円の壁がなくなるわけではありません。

たとえ19時間程度に労働時間を抑えたとしても、今後の賃金上昇次第では130万円を超えてしまうこともあり得ます。つまり、20時間の壁は超えないけれど、130万円の壁は超えてしまったというケースです。そうすると、夫の扶養から外れるにもかかわらず、勤務先の社会保険にも加入できず、自ら国保と国民年金に加入する必要が生じます。

この場合、手取りは激減し将来の年金は増えないという、踏んだり蹴ったりの状況になります。また、夫が給付の手厚い健保組合に加入している場合、その扶養から抜けて国保に入るわけですから、デメリットしかありません。そこで再び20時間の壁と130万円の壁の両方を意識して、働き控えをする人たちが出てくると思われます。

しかし、時代は確実に変わっています。過去の常識に囚われて、壁の手前で縮こまっていては人生100年時代を乗り切ることはできません。

年金の「3号」は時代遅れになりつつある

第3号被保険者制度が開始された1986年度の第3号被保険者数は1093万人(男性3万人、女性1090万人)でした。その後、少しずつ増えていきましたが、特に女性の場合、1995年の1216万人をピークに、一貫して右肩下がりです(図表4)。

制度導入から40年近くが経過し、日本社会の様相は大きく変化しました。人口減少により労働力が希少性を帯びると同時に、長くなる老後に備えて、現役時代にしっかり働いて社会保険料を納付し、将来の低年金者を減らすという社会的要請もあります。今後も社会保険の適用拡大が続くことは避けられません。