例外のソニーはアメリカ型の大会社として成功
独裁国家や新興国、強権的な中国も、利権でつながる閉鎖的な企業社会だから、財閥グループと同様ではないかと考える人もいるかもしれないが、そういった国々では大企業のトップも世襲制になってしまい、新陳代謝が図れない。
しかし日本の場合は、トヨタを例にするまでもなく、大企業の会長は創業者一族ではあるものの支配株主ではないケースが多い。会社法の規定に則ってトップが選出されるという意味で社内の権力構造は民主的であり、現存する財閥構造は社会の安定のためにも一定の役割を果たしている。
例外的存在はソニーである。モノづくりの会社としてスタートし、今でもレーザーエッチング装置を開発するなどその伝統は生きているものの、会社全体としてはアメリカ型の大会社であるファブレスの方向へと進んでいる。
こうした大企業グループが日本の株価を支えているという実体をまずは頭に入れておいてほしい。
ソニーのような「ソフトパワー」がなければ失敗する
ソニーは他の日本のトップ企業とは一味違った存在であることはすでに述べたが、もう少し深堀りしよう。ソニーの売上は2022年度、2023年度の2年連続で過去最高を更新、2023年の営業利益は1兆2088億円という好業績である。
好調の原因はソフトやコンテンツの輸出による高収益で、今後の見通しも明るい。ソニーは昔から日本の会社らしくないところが魅力で、もともと外資比率が高かった。
2024年3月時点での株式の保有割合は外国法人等が個人・個人以外を含め58.59%と6割近くを占めている。それが他の製造業の大手とは異なる企業文化、企業風土を生み出す原動力になっているのかもしれない。
現在のソニーは電機会社から総合会社に変貌しており、グループとしては、ソニー銀行などさまざまな「ソニー」の看板を掲げたコンテンツやサービス業関連が大きくなっている。
会社が保有する不動産や土地だけではなく、会社のソフトパワーを裏付けるコンテンツも重要な資産であるという概念を、他の企業は見習うべきであろう。
「知財」という言葉があるように「知的財産権」が重要だ。“96歳の世界的に有名なネズミ”が、今でも莫大な富を関係会社にもたらしていることを思えば、そのパワーの凄まじさの一端を理解できるだろう。