あるエンジニアの生徒は、TOEICのスコアが500点前後で伸び悩んでいた。頭脳明晰で話題も豊富なのだが、英語に対する興味が薄い。そこで発売直後だった「iPhone」についての英文記事を渡して、「次の週までに知らない単語がないようにしてください」と指示した。すると翌週、彼は完璧に単語を覚えてきたばかりか、「日本の技術が侮られている」と記事への不満をぶつけ、「もっと海外の記事を読みたい」と話すようになった。その後、スコアは数カ月で700点以上にまで伸び、「英語を学ぶのが面白い」と姿勢が変わった。
好奇心によって知らないうちに壁を越えるのが、学ぶ姿勢では一番強いと思う。とりわけ今はインターネットを使えば、「教材」となる英文記事を無料でいくらでも見ることができる。素晴らしい時代になったと思う。
単語学習では、「語源」を調べながら進めると、勉強がより楽しくなる。たとえば、「president(大統領、社長、会長)」という単語は「pre(前に)」、「sid(座る)」、「ent(行為者)」という三語を組み合わせたもの。原義は「前に座っている人=みんなの代表者」である。すると「preside(司会をする、主宰する)」という動詞も「前に座って取りしきる」という原義に基づくと類推できる。単語を調べるときは、大きな辞書を引いて、語源まで押さえておくといい。
1959年、青森県生まれ。北海道大学文学部を卒業後、洋書店に入社。34歳のときに退社。引きこもり生活に入り、独学で英語学習を始める。7年後に貯金が底をつき、英語講師を目指して試しに受けたTOEICで970点をとる。以後、990点満点を38回記録している(2013年3月現在。ナラド エンタテインメント公式サイトより)。海外渡航経験なし。独身。著書に『イングリッシュ・モンスターの最強英語術』(集英社)などがある。